『体幹トレーニング・ぞうきんがけ世界一周』

GOLD|優勝(文部科学大臣賞)・市民賞・大学生賞・高校生賞・DDP(東大門デザインプラザ)特別賞

『体幹トレーニング・ぞうきんがけ世界一周』

伊東高等学校城ヶ崎分校(静岡県)
柴レオン(2年)/小林裕月(2年)/松浦茉莉子(2年) 指導教員:大津忍教諭

『アプリで変える地方自治』

SILVER|準優勝・ニコニコ生放送視聴者賞・DDP(東大門デザインプラザ)特別賞

『アプリで変える地方自治』

岐阜総合学園高等学校(岐阜県)
濱﨑瑞樹(1年)/藤垣成汰朗(1年)/鈴木郁哉(1年) 指導教員:石井正人 教諭

『地球絵日記』

PRIZE|入賞

『地球絵日記』

北海道札幌平岸高等学校(北海道)
柳橋るな(2年)/野村汐音(2年)/石川萌(2年) 指導教員:吉岡隆 教諭

『コミックダイアリー』

PRIZE|入賞

『コミックダイアリー』

東京都立総合工科高等学校(東京都)
松岡渓(2年)/田代歩夢(2年)/永田健人(2年) 指導教員:久世佳史 教諭

『リサイクルシティ』

PRIZE|入賞

『リサイクルシティ』

静岡県立科学技術高等学校(静岡県)
兼森洸樹(2年)/杉山拓哉(2年)/鈴木彩楓(2年) 指導教員:秋山純子 教諭

『結婚応援ファンド』

PRIZE|入賞

『結婚応援ファンド』

大阪市立中央高等学校(大阪府)
星野健太(3年)/藤田理香(3年)/高山雄司(3年・サポートメンバー) 指導教員:安東裕二 教諭

『マスクMONDAY @ 商店街』

PRIZE|入賞

『マスクMONDAY @ 商店街』

米子工業高等専門学校(鳥取県)
中村佳世(3年)/服部愛(3年)/足立香織(3年) 指導教員:西川賢治 教諭

『シャッターチャンス』

PRIZE|入賞

『シャッターチャンス』

有田工業高等学校(佐賀県)
古川柊太(3年)/梶原颯子(3年)/太田実玖(3年) 指導教員:森永昌樹 教諭

PRIZE|入賞

『Anony Talk』

世明コンピューター高等学校(韓国/ソウル市)
キム・ナムジュン(2年)/キム・ハヨン(2年)
※都合により決勝大会を欠席

審査講評

小山薫堂

小山薫堂(こやま・くんどう)

放送作家、脚本家/東北芸術工科大学教授 ◎審査員長

小山薫堂

今回集まった874のアイデアはどれも素晴らしいものでした。結果として勝敗はついたものの、入賞できなかった皆さんは決して悲しい気持ちになることはありません。なぜなら、それがどんな内容であれ、一度自分の中に生まれたアイデアは、いつかきっと役に立つ時が来るからです。アイデアの種を自分の心の中に植えておけば、それは環境や時代という雨風にさらされることで、知らず知らずのうちに成長し、大きな企画として花開くのです。ですから、今回のデザセンに作品を出品したということを、自分の自信にしてください。どうか誇りに思ってください。
僕は皆さんが本当に羨ましいです。好きなことを自由に考えられる時間が、皆さんにはあるからです。大人になると、誰かから依頼を受けて、仕事として企画を考えるという機会が多くなります。必要に迫られて何かを考えなければなりません。けれども皆さんは、高校生の時はもちろん、大学生になっても、自分の身近にある課題を発見し、自由な発想が許される時期です。あと何年間か社会に出るまでは、自由な発想で自分の身の周りにあるものの中から、もっとよくしたいと思うデザインを考えてほしいと思います。
デザセンに出品する作品を考えることは、自分の暮らしの中にヒントを見つける作業から始まります。それによって、日常がもっともっと楽しくなるはずです。そう、デザセンは自分の人生が楽しく見えてくる魔法のメガネでもあるのです。
ぜひ、来年も挑戦してください!たくさんのご応募、お待ちしています。

赤池学

赤池学(あかいけ・まなぶ)

(株)ユニバーサルデザイン総合研究所 代表取締役所長

赤池学

本年度のグランプリは、伊東高等学校城ケ崎分校の「体幹トレーニング・ぞうきんがけ世界一周」が受賞した。同校はかつて、「修学旅行のまくら投げを公式スポーツに」という、温泉観光地の若者ならではのユニークな提案を行った高校である。先輩たちのDNAを継承する今回の提案は、日本の子どもたちの運動能力の低減が指摘されるなか、高校生のみならず、小中学校でも展開できる、ユニバーサルな体力増強プログラムのデザインである。ぞうきんづくりから始まるこのプログラムは、ものづくりや家政教育にも発展していくことは確実である。また、市川工業高等学校の「LGBT」への着眼には、驚かされた。実は、小社にも複数のゲイ研究員がいるように、クリエイティブの世界には、「LGBT」の人々が結構多い。「粋」「いなせ」「きゃん」の文化には、男性性と女性性の融和がその底流にある。トランスジェンダーへの理解は、単なる差別の払拭に留まらず、コミュニケーションやクリエイティブの醸成にも広がっていくだろう。
そして、岐阜総合学園高等学校の「アプリで変える地方自治」は、極めて有用、かつ実現性の高いデザイン提案である。教科書出版最大手の東京書籍と小社は今、キャリア教育や、国際教育、日本のオンリーワン技術など、教科横断型の総合学習支援サイト「Edu Town」を開発している。是非、高校生が地元の議会政治の実際を学び、参画するサイトを、同社にご一緒に提案しましょう。

大宮エリー

大宮エリー(おおみや・えりー)

作家、脚本家、映画監督、演出家

大宮エリー

今年もデザセンの審査員に呼んでいただき、楽しかった。

審査というよりも、皆さんの世の中がもっとハッピーになったらいいなという思いに触れに行ったというか。だからやりたいことって本当はこういうことなのでは?とか、だったらこうしたらもっとよくなるかも?などお伝えしました。

それも1つのプレゼンであって、正解ではありません。

皆さんのプレゼンとアイデアをもとに、意見交換するというようなイメージでした。

全体的にいつも刺激をうけ、楽しかったなという印象です。人が一生懸命とりくんだものに触れるのはすがすがしいものです。世の中をよくするなんていう方向のものなのだから、なおさら。

でも、もし、来年、参加されるかたにアドバイスできるとしたら、

「こうあるべき」「こうじゃないといけない」という型なんてないよ、ということです。

プレゼンも、身振り手振りをつけたもので統一されていますが

そんなルールなんてないです。だから、普通に、語りかけるように

話してもいいですし、さっぱりしたものでも、伝わると思うんです。

みんな、同じように、声を張り、演劇部みたいであるのが気になりました。

それから、毎年、ダイアリーが多いですけれども

商品化できるものがいい、という決まりも、デザセンの募集要項を読んでみて

書いてありませんでした。シャッター商店街をどうにかしなきゃとか、

地球の環境について考えなきゃ、というのも多いけれど、もっと独自の問題意識があっていいと思うのです。それはスケールが大きくなくていい。ささやかなものでいいんです。だってちょっとしたことが人の心を豊かにすることもありますよね、それだって世の中をよくすることだから。

本当に、ふとした疑問、から、アイデアは膨らみます。

これって、おかしいよね、どうしたらいいんだろう。

そんな個人的な感情、具体的な体験が、

その後の、リサーチ、聞き込み、調べ込み、につながるんだと思います。

調べるのも、何か文献やデータを調べるのではなく

やはり、足をつかって、聞き込みをするのがいいと思います。

なぜなら、それは、皆さんだけしかつかみ得なかった情報と発見になるからです。「こうしなきゃいけないんだろう」

という傾向と対策から離れて

まずは素朴な疑問を見つける旅をしてほしいです。

難しいことだと思うけれど。
だから難しくて結局、それが見つからなくてデザセンに出られなくても

そういう過程こそに意味があると思うのです。あと、それを客観的に見てみて、たとえば他人がそれを提案した時に、自分が、そうだなぁ、って思えるかどうか。つまり独りよがりになってないかってこともチェックするといいと思います。

デザセンは、世の中をよくすることでもあるけど、

自分をよく知る、ことでもあるんですよね。きっと。

杉本誠司

杉本誠司(すぎもと・せいじ)

(株)ニワンゴ代表取締役社長

杉本誠司

昨年に引き続き、デザセン審査員として決勝大会を訪れた。
高校生のプレゼンテーションは演出面でもかなりレベルアップしている。デザインテーマも政治や人権問題、婚活にエコ、オトナ顔負けのコンテンツ企画に思わず審査対象が高校生であることを忘れ、ついつい辛口批評になることも…。
むしろ、オトナ顔負けというよりは、オトナがちゃんと考えなければならない問題を高校生が問題解決に向けたデザインとしてデザセンに挑んでいる。もっとオトナ諸君が頑張らねば、という思いにかられながらも、さらに今回のデザセンで気になった点がある。
どの企画も非常によくまとまって入るものの、「この企画っぽいの見たことあるなあ?!」的なものが多い、もちろんマネしちゃだめだなどとケチな話をするつもりではなく、デザインとしての問題提起のテーマ設定はどれもいいのだけど、「ちゃんと解決につながるのかなあ?」という思いと、すでにオトナが取り組んでいるが、「あまりうまくいってないよねこの手の施策」という企画の行く末が頭を駆け巡る。すなわち、何が言いたいかといえば、そもそもケーススタディとなっているオトナの類似的な先行事例が“イケてない”のではないかということが想像され、やっぱり「オトナがんばらないとダメじゃん」という結論につながっていく。理想的なデザインの流れとしては、うまくいっている(あるいはうまくいきそうな)先行事例をキッチリお手本としてオトナが見せつつ、さらに高校生なりの傍若無人なスバイスをガンガンに効かせてデザセン審査員を唸らせる。そんな大人と高校生のデザセンを成立させる関係がいろんな人の幸せにつながっていくのかなーと、審査しながら強く感じた2014年のデザセン。
2013年では「高校生はもっとガンバって大人を驚かせよ」的なメッセージを述べたけど、今回2014年の講評(?)は、まずもって僕自身を含めたオトナが頑張ればデザセンがもっとよくなるという理屈のもと、「オトナはがんばって高校生(デザセン)上げてこうよ」というメッセージを贈ろうと思います。

竹内昌義

竹内昌義(たけうち・まさよし)

建築家/東北芸術工科大学教授

竹内昌義

「なんで?」
デザインを考える時にもっとも大事なのは何かと考えると、何かに疑問をもつことだと思う。小さい子どもがお母さんに「なんで?」「どうして?」と聞くあの感じである。
ものごとにはいろいろ理由があって、そうなっていることが多いけど、その理由はなかなか見えない。その理由がわかると、「じゃあ、こうすればいい」と解決策が見つかる。だから、その大もとを知るのは大事なのだけれども、すぐにはわからない。
当たり前に見えていることが、そうなるまでに色々な人の努力や研究があってのものだったりする。あるいは、何か新しいものができて、その影響でそうなったものかもしれない。たとえば、インターネットや太陽電池は、私たちの生活やそれに対する考え方を大きく変えつつある。常に同じ状態にあるのではなく、いつも変化しているのだ。
考えて考えてもわからなくなった時、ぼくは色々比べながら考える。何と比べるかというと、この人だったら、どう考えただろうかとか、どう行動しただろうかとか。その人はたとえば、友だちの場合もあるし、自分の母親だったり、外国の人だったり、歴史上の人物だったりする。だから、外国のことを学んだり、歴史の本を読むのが好きだ。
現在、日本は激動の時代と言われる。大変そうではあるけれども、ひっくり返して、チャンスだらけだとも言える。今までの考えが変わる時、長く生きている人はなかなか考えを変えられない。だから、判断を間違えてしまう確率が高い。でも、若い君たちはなにぶん経験がない分、自由に考えることができる。子どものように「なんで?」を連発して、いろいろ考えてもらいたい。

鄭國鉉

鄭國鉉(Chung Kook-Hyun)

東大門デザインプラザ(DDP)経営団長

鄭國鉉

今年も数多くのアイデアが出品され、そこに込められた純粋な夢と、解決していこうとする意思を見出すことができました。
その熱気だけでも、すでにこの社会に様々なメッセージを投げかけていると思います。革新というのは緊張と大きな目標意識から出て来るものだと言われているように、より大きな規模の波及のためにはひとつの地域、国家の枠から離れ、アジアそして世界に視野を広げていくべきでしょう。スウェーデンの言語学者で環境運動家であるヘレナ・ノーバーグ=ホッジ氏は、代表作「懐かしい未来:Anciant Future」で伝統的な共同体価値と今日の文明社会の衝突を通して持続可能な新しい未来像を考察しました。
もちろん、すべての問題をひとつの事例として例えるのは難しいと思いますが、産業の弊害を減らし、社会と自然に対する配慮、優しさなど共同体として新しい夢を語り合うのが一番重要だと思います。
したがって、「デザセン」のような青少年のみの交流の場は、国家を超えた多国籍活動として位置づけるべきだと思います。
産業化、都市化の否定的な影響を改善し、新しい解決策を提示するのは後世に対する配慮であり、現在を生きている私たちの当然なる義務だと思わなければなりません。私たちはそのような時代的責任を、デザセンという鏡を通してもう一度確認したと思います。
私たちの周りにある数多くの物や人間から操縦されてきた機械は、日常生活の中で本物の同伴者として進化するでしょう。
高齢化社会、すでに人間はより忠実な「HospitalitySolution」としての変化を要求されていると言えます。
これからはひとつの物体の価値より、サービスを提供する見えない心理的安心感と安全、そして温かい社会、配慮をするデザインが多くなることを期待しています。

中山ダイスケ

中山ダイスケ(なかやま・だいすけ)

アーティスト、アートディレクター/東北芸術工科大学教授

中山ダイスケ

今年もたくさんの興味深い応募があり、審査をさせていただいて幸せでした。エネルギーに関するアイデアや、高齢化に関するアイデアが多かったのは今年の特徴のようです。
ところで皆さん、デザセンというコンテストの締め切りに向けて出品アイデアを考えるのはなかなか大変だったと思います。アイデアというものはひねり出すよりも、ふと湧いてくることが多いものだと思いませんか?そうやってアイデアが湧き出すためには、ちょっとしたエネルギーが必要です。そのエネルギーとは、日頃から貯めておいた「?」の貯金だと思います。「?」の貯金とは、普段から「変だな?」「おかしいな?」「どうしてだろう?」と、気になっていることの蓄積です。あたりまえだと思っていることを考え直してみたり、いつもの情景を少し違った角度で見つめてみたり、勝手に組み合わせてみたり、そんな思考遊びのクセをつけておくと、きっとたくさんの「?」が貯まります。
優勝した「体感トレーニング・ぞうきんがけ世界一周」も、そんな「?」から立ち上がったアイデアだと思います。学校に言われるままに、何も考えずにただ「ぞうきんがけ」をしていたら、それはただ床をきれいするだけの行為です。そうやって、あたりまえの日常に「?」を見つけることはとても楽しいゲームです。そしてそのゲームの最強プレイヤーは、大人と子どもの両方の感覚を持っている高校生の皆さんなのです。

マエキタミヤコ

マエキタミヤコ(まえきた・みやこ)

クリエイティブエージェンシー「サステナ」代表

マエキタミヤコ

いま私たちが暮らしている世の中は、もしかしたら、こうじゃなかったかもしれない。そんな空想をしたことはありませんか。もしお母さんとお父さんが出会わなかったら(あなたはこの世の中にいない)。もし東條内閣が開戦を閣議決定しなかったら(日本は敗戦しなかった、かも)。もしスティーブ・ジョブスがアップル社に呼び戻されなかったら(スマホはこんなに流行ってなかったかも)。いま暮らしているこの世の中は、「もし」のかたまりです。本当はこうじゃなかった可能性もオオアリ。だからコッチの方がいいかも、こんなのあってもいいかも、そんな「別の道」を考えて提案する人が、この世の中を切り開いているといえるし、そういう人が少ないと、みんなが困ったことになってしまう時代なのです。
皆さんも薄々感づいているかもしれませんが、この世はあんまり順風満帆じゃありません。もちろん、皆さんのせいじゃありません。大人たちがイケナイんです。でも親をはじめとする、皆さんを取り巻く優しい大人たちは、皆さんを深く愛しているので、この世の中が実はダメダメなんて口が裂けてもいえません(皆さんが世を儚く思ったらタイヘン!だし)。だから、なんにも不満なんて感じないよ?!と、あなたが思っても不思議じゃないのですが、その優しい大人たちのスクラムの外をチラっと覗いてみてください。そこに何か変なモン落ちてませんか。
今年もそんな落ちてる変なモンを発見して、ちょっとでも世の中よくしようと自分の頭で考え発展させた、優れたアイディアが集まりました。素晴らしかったです。
高校生はもう大人です。デザセンはアイディア下剋上の世界です。子どもらしく振舞う必要はないという自由を満喫してください。来年はいっそう生意気なアイディアが集まりますよう。楽しみにしています。

前田哲

前田哲(まえだ・てつ)

映画監督/東北芸術工科大学准教授

前田哲

もしも、世界中の学校で日常的に、「ぞうきんがけ」をしている子どもたちがいたら…、なんだか楽しそうな子どもたちの姿が浮かび、子どもたちの声が聞こえてきます。
もしも、世界中の人々が日常的に、「レインボーカラー」のグッズを使用したり、身につけていたら…、初対面の人に話しかけるきっかけになったり、会話が弾んだりしている姿が見えてきます。
その姿を、その世界を、想像させてくれる「デザイン」は、とてもワクワクします。
何よりも、世の中を変えてくれる力を感じさせてくれて、幸せな気分になります。
何に対しても、「発見」や「驚き」を見つけることが、アイデアの源であり、デザインの種になると思います。
それは、普段何気なく目にしていることや、当たり前のようにしていることから、「何でだろう?」「何だろう、これは?」と、ひっかかりや違和感を感じたり、疑問に思ったすることから始まります。今私たちが生きる「現実」は、「違う現実」になっていたかもしれない可能性があったと想像できるか。
そこに、人を、社会を、世界を、変えていくヒントが隠されていると思います。
未来を今とは違う現実に、「デザイン」していくのは、君たち自身です。