『まくら投げのすすめ』

準優勝・市民賞・高校生賞

『まくら投げのすすめ』

伊東高等学校城ヶ崎分校(静岡県)
山下摩琴(1年)/野口香菜(1年)/稲葉古都(1年) 指導教員:大津忍 教諭

『ネガポ辞典』

第三位

『ネガポ辞典』

北海道札幌平岸高等学校(北海道)
蠣崎明香莉(3年)/髙嶋結菜(3年)/萩野絢子(3年) 指導教員:吉岡隆 教諭

『命を救う 動物税』

毎日新聞社賞

『命を救う 動物税』

京都すばる高等学校(京都府)
鈴木英惠(2年)/鶴田紗菜恵(2年)/吉川拓志(2年) 指導教員:貴島良介 教諭

『Let's ぬるぬる! 珪藻公園』

入賞

『Let's ぬるぬる! 珪藻公園』

北海道富良野高等学校(北海道)
朴田瑞季(3年)/山内美代(3年)/高橋康憲(2年) 指導教員:美土路建 教諭

『ポジションバッチ POTCH』

入賞

『ポジションバッチ POTCH』

新庄神室産業高等学校(山形県)
設楽由加里(3年)/大場聖良(3年)/江口千夏(3年) 指導教員:松田宏美 教諭

『Let's share the

入賞

『Let's share the "you"』

九州産業大学付属九州高等学校(福岡県)
酒江友里子(2年)/梅本紋菜(2年)/無津呂理沙(2年) 指導教員:占部政則 教諭

『折り上手 たたみ上手』

入賞

『折り上手 たたみ上手』

熊本工業高等学校(熊本県)
野副貴史(3年)/柳川涼(3年)/古閑美寿枝(3年)(勝連千晶 代理) 指導教員:佃正義 教諭

審査講評

小山薫堂

小山薫堂(こやま・くんどう)

放送作家、脚本家/東北芸術工科大学教授 ◎審査員長

小山薫堂

僕は大学でいつも、まさにみなさんが考えてくれたような「企画」を教えています。いいアイデアを思いついたとき、あるいは自分が考えたアイデアをいろんな人が素敵だねって言ってくれたとき、すごく幸せな気分になりますよね。さらにアイデアが実現されて社会に拡がっていって、自分の手を離れたいろんなところで実施されるようになると、もっともっとすごく幸せな気分になるんです。
僕が企画を考えるときには、3つのことを考えます。
1つは、「それは新しいか」。
2つめは、「それは誰を幸せにするか」。
3つめは、「それは自分にとって楽しいか」。
入賞した10チームの提案には、この3つの要素がちゃんと入っていたように思います。優勝した「ウームメン」は、デザセンでは数少ない男性3人のチームで、男性視点で見事におもしろいものを捉えていました。プレゼンテーションの完成度も高く、文句なしで1位でした。準優勝の「まくら投げ」もとても良かったのですが、地域おこしの要素や、誰を幸せにするかという視点が入っていたら、優勝も狙えたのではないかと思います。第三位の「ネガポ辞典」は、たとえ携帯電話のアプリにならなくても、人生のアプリ、心のアプリとしては最高のものだと思います。僕も普段からポジティブに考えるようにしていますが、ネガポ辞典という装置を心のなかにインストールするという意識を持つことによって、人生がより豊かになっていくのではないかと思います。
今後はみなさんの提案を、いかに実現させるかというところにさらに重きを置いていきます。すぐに実現できるかもしれませんし、3年後にまくら投げがCNNのニュースになっていたりするかもしれません。審査結果の行方を、今後も見守っていてください。

赤池学

赤池学(あかいけ・まなぶ)

(株)ユニバーサルデザイン総合研究所代表取締役所長

赤池学

母体の赤ちゃんを、パートナーの男性が見ることのできる携帯アプリの開発が、2010年度の第一等に輝いた。審査以前に、子育てを嫁さん任せにしてきたダメ親父の私にとって、胸が痛くなる、しかし素晴らしい提案である。産婦人科と連携すれば、ハード的にも制約要因がないし、ソフトを組むのも、高校生でも充分に可能だろう。同じダメ親父候補の男たちに、女性と子どもをかけがえなく思う気持ちを間違いなく起動させることができるだろう。是非、開発の暁には、私が審査委員長を務めているキッズデザイン賞に応募して欲しい。少子化政策担当大臣賞が充分に狙える、心温まるデザイン提案である。
枕投げをスポーツ競技化しようというファンキーな提案も、実は充分に実現化が可能である。しかもナイスなことに、提案者たちは、伊東高校の学生たち。地元、伊東の温泉旅館や、修学旅行の定番旅館を公式フィールドにすれば、地域起こしに発展することも間違いなし。メディアも確実に食いつくだろう。
そして、ネガティブな思いを、ポジティブに変える。そのための「ネガポ辞典」を作ろうというデザイン提案にも、大きな広がりを感じた。なぜなら、デザインの根底に、様々な赤信号を緑に変えようという「REDTO GREEN」の思想があるからだ。自分編だけでなく、社会の「ネガポ辞典」も是非、構想して欲しい。その暁には、審査員長の小山薫堂さん、監修者になってあげてくださいね。

竹内昌義

竹内昌義(たけうち・まさよし)

建築家/東北芸術工科大学教授

竹内昌義

デザインって人を幸せにするものだと思う。社会は思ったほど理想に近くないし、問題はいっぱいある。身近な環境だって決して楽しいものだとはいえない。ましてや地球規模で考えると変えなくてはいけないことだらけだ。そこで、なにをどう変えていくか、どうしたらハッピーになれるか。そういうことを考えることがデザインなんだなって思う。だけど、それを真っ正面からとらえてもなかなかうまく行かないことが多い。もし、そうやってうまく行くはずだったら、すでに誰かがもうやっているんだと思う。いろいろなことの背景や成り立たせていることのベースから考えて、それをすこしずらして見る。そういうことができれば意外とおもしろいことできるような気がする。
そのとき、大事なのは余裕とユーモア。なんとなくくすっと笑ってしまうような気持ちがあった方がいいんじゃないかな。理由は簡単。誰でもしかめ面をした人からお説教されるより、楽しそうなことの方が好きで、ついついやってしまうからだ。そうやって、みんなでポジティブなスパイラルをつくって、それに参加していく。だからみんなハッピーになれていく。デザインってなくても生きていけそうだけど、実はないと生きていけないビタミンみたいなものだと思う。今年の受賞作はこういうことがあったらいいなと思わせるものばかりだった。審査が終わったとき、とても大きな元気をもらった気がした。どうもありがとう。

森本千絵

森本千絵(もりもと・ちえ)

アーティスト、アートディレクター

森本千絵

はじめて参加しました。問題をみつけるということは大変です。プレゼンをするということは大変です。いかに、普段から好奇心をもち、そして、問題をみつけ、それを解決するアイデアを持ち、実行する仲間がいるかどうか。それに高校生のうちに気づき、ここまでのことを発表するということ自体が素晴らしい。背伸びした問題定義より、等身大のものに興味がわいた。あの発表から、なぜか枕投げ戦法が気になったり、すっかり私まで影響を受けてしまった。もう少し、実際に提案が実現したときに傷つく人がでないか、あかの他人まで楽しめるものなのかというとこまで想いを馳せるとさらに良かったかもしれない。でも何よりも、やらないより、やる。この発表で私たちの心を動かしたからには、この何事も冷めた目でみがちな世の中をわっと沸かせて喜ばしていただきたい。楽しみにしてます!

中山ダイスケ

中山ダイスケ(なかやま・だいすけ)

アーティスト、アートディレクター/東北芸術工科大学教授

中山ダイスケ

今年のデザセンは、一次予選からレベルの差がくっきりとしていた大会でした。それは着眼点やプレゼンテーション技術のレベルではなく、エントリーしている高校生自身が、自らもそのアイデアを楽しんでいるか?という前提の差が歴然だったのです。高校生のエントリーシートは恐ろしく正直です。自分が面白いと思っていないものは他人には全く伝わりません。審査会で数多くのエントリーシートを眺めながら、まずは自分自身に響く事の大切さをあらためて感じさせられました。優勝した有田工業の「ウームメン」には、男の子達が、来たるべき自分の将来の育児生活を、希望を持って楽しんでいる様子が感じられ、思わずこちらもつられて男性の役割を再認識しましたし、伊東高校城ヶ崎分校の「まくら投げのすすめ」では、シートを読みながら僕自身がまくら投げに参加している気分になり、熱く燃えることができました。そのように、世の中を変える新しいアイデアとは、決して顔をシカメて考えたり、普段の学校の授業のように資料ばかりを集めて暗記する事ではなく、自分達が素直に楽しんでいる様子や、我を忘れて真剣に取り組んでいる姿勢が、まるで水の波紋のように周囲の人々にも伝わった結果なのだと思います。デザセンは、本気で高校生のみなさんのアイデアを、柔らかいうちにどんどん現実世界へ送り出す準備を整えています。これはチャンスだと感じることができる君のような人が、真に世の中を変えられる人なのです。

マエキタミヤコ

マエキタミヤコ

クリエイティブエージェンシー「サステナ」代表

マエキタミヤコ

いま世界は惑っています。大人は惑っています。ジツは世界は以前から惑ってました。でも以前は普通の人が社会づくりについて「どうしたらいい?」と意見を求められることがあまりなかったので、惑っていることにすら気がつかなかったんだよね。この頃ではよく意見を求められます。よくぞここまで来たもんだとも思うけど、まだまだ「もっといい社会にするにはどうしたらいい?」と意見を求められたからといって、さくっと自分で調べて自分の頭で考えて発表する人は少ないのが現状。さらにアートやデザインには「カッコいいなあ」と人を憧れさせるチカラが潜んでいる。だからデザセンへのチャレンジにたくさんの人が興奮するんですね。この報告書を読んでいるみなさんに北海道札幌平岸高校の「ネガポ辞典」の本質に切り込む姿勢を見せたかったなぁ。有田工業高校「ウームメン」のユーモアたっぷり発表を見せたかったなぁ。伊東高校城ヶ崎分校「まくら投げのすすめ」見せたかったなぁ。カッコよかったよー。まだこの世に生を受けて十数年という人たちが、自分で調べて、親や学校や先生という有り難かった殻を自ら破って「よりよい社会ってどっちのこと?」を、世界の惑いに照準合わせて、解決方法をデザインして発表する。これがカッコよくなくて何がカッコイイんだろう?この半年、そろそろ時代がデザセンに追いついてきたんじゃないかなと感じる瞬間が何回もありました。もっともっとこのインフルエンス、広げていこー。