優勝[文部科学大臣賞]
『Chaubt!』
木津高等学校 /京都府
黒﨑 咲さん、竹内 温郎さん、山田 遥さん
優勝[文部科学大臣賞]
木津高等学校 /京都府
黒﨑 咲さん、竹内 温郎さん、山田 遥さん
準優勝/ニコニコ生放送視聴者賞
堀川高等学校 /京都府
北原 旺希さん、笹川 孝太朗さん、島田 怜奈さん
第三位
山形中央高等学校/山形県
伊藤 みやびさん、黒柳 葉月さん、杉山 直史さん
田村学特別賞
高松東高等学校/香川県
尾﨑 暖花さん、山津 広大さん、朝國 椛さん
大橋マキ特別賞
盛岡工業高等学校/岩手県
角掛 彩花さん、田屋 咲菜愛さん、鈴木 和花さん
入賞
仙台二華高等学校/宮城県
渡邉 咲音さん、工藤 里桜さん
入賞
瀬戸工科高等学校/愛知県
浦元 咲羽さん、寄田 望未さん、松浦 園子さん
入賞
名城大学附属高等学校 /愛知県
平松 大惺さん、北村 結さん、木村 日菜さん
入賞
淀商業高等学校/大阪府
長谷川 愛乃さん、山内 咲希さん、久保 日向さん
入賞
九州産業大学付属九州高等学校/福岡県
井伊 息吹さん、末松 優空さん、大塚 晴宗さん
アーティスト、アートディレクター/東北芸術工科大学学長 ◎審査員長
文部科学省初等中等教育局 主任視学官
デザイン選手権は、「身の回りの問題の本質に目を向けて、自ら考え解決方法を提案する場」「探究型学習やアクティブラーニング、デザイン思考を用いた学習の場」として用意されたものです。デザセン2022に引き続き、デザセン2024の審査員を務める中で、多くの高校生が、デザイン選手権の主旨に適う探究に取り組んでいることを強く感じました。
各学校において探究は、「総合的な学習の時間」や「総合的な探究の時間」を中心に行われており、物事の本質を探って見極めようとする一連の知的営みとして学習活動が展開されています。「課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現」の探究のプロセスを繰り返すことが重要で、決勝大会の発表では、設定した課題を更新しながら学習の質を高めている事例がたくさんありました。
デジタル学習基盤を積極的に利活用する姿も多くみられました。情報化社会において、ICTの活用は大切な視点です。一方で、身体性を生かした体験活動や実際に社会に働きかけたり人と関わったりする活動を行うことも心がけてほしいと思いました。デジタルだけではなくリアル、アナログの価値も意識して、様々な視点からバランスよく探究に取り組むことを期待したいと思います。
本気で真剣に探究する学びは、チャレンジした一人一人の将来と深く結び付くものだと思います。自らの人生はもちろん、未来社会を創造する意気込みで、果敢に課題解決に挑戦し続けてほしいと願っています。
IFA認定アロマセラピスト/一般社団法人はっぷ代表
1.岩手県立盛岡高等学校「食文化を繋げよう」
郷土料理は美味しい!たくさんの人に味わってほしいという思いを起点に、実体験に基づいた素敵な提案でした。豆知識クイズも面白く、レシピ動画もわかりやすかったです。「郷土料理スペシャリスト」というeラーニング資格もあるようですし、観光業界や食材宅配業界とのコラボも面白そうです。あるいは、家庭環境によって参加機会が変わってしまうので、誰もが参加できる学校教育(食育)との連携も良さそう。生産者の高齢化や気候変動による材料調達の難しさなど郷土料理に関連する課題も検討していただいて、是非、これからも郷土料理の素晴らしさを伝える探究を続けてくださればうれしいです!
2宮城県仙台二華高等学校「満員電車に学生定期」
学生さんたちの切実な思いから生まれた、みんなの毎日がハッピーになるための素敵な提案だと思います。過去の事例など説得材料を携え、是非、まずは仙台市交通局などに働きかけて協働しながら実装化の道を探ってくださいね。応援しています!
3山形県立中央高等学校「Connect-山寺で、つなぐ、結ぶ、接続する」
昨年の「山寺ゲームブック」から多角的なプロジェクト展開に驚くとともに、一つひとつのプロジェクト進行がとても丁寧で、地域の長老や和菓子店の方との出会いや生の声を大切に、プロジェクトに反映していらっしゃる姿勢がまさに探究だと心から敬意を表します。真摯なConnectスピリットで、これからも足を使ってたくさんの出会いを繋ぎ、地域を元気にして笑顔を広げてくださいね。山寺ゲームブックを携えて山寺探訪したいです!
4名城大学附属高等学校「とくめいおてがみ」
探究型授業の広がりとともにイシューからの提案が増えていますが、あえて高校生目線で新たな価値を提案するとても素敵な企画でした!質疑応答でお話されていた介護施設などでも検討されているお話も良いですね。先日、認知症の方の施設で取り組まれている取り組みが報道されていたので、ご紹介させてください。ある介護施設では、「自分たちも誰かの役に立ちたい」と考えるおばあちゃまたちが得意の手芸を活かして雑貨を作り、近隣の難治性の病気と共に生きる子どもたちの病院に届けているそうです。ただ届けるだけでなく、贈り方に工夫がありました。病院の廊下にふた付きの棚(ニッチ)があって、お届けものが届くとマークでわかるようになっていて、入院患者の子がふたを開けると棚に手作りギフトが入っている・・・中身は開けたときのお楽しみ。匿名の誰かから匿名の誰かへの小さなサプライズギフトだけれど、贈る側も受け取る側もあたたかな気持ちになる素敵な活動だなと思いました。このギフトの場合、施設側でも病院側でも管理者が媒介していますが、封に入れたお手紙の場合、いたずら回避の検閲は難しいですものね。いっそハガキにしてしまう!?安易でしょうか・・・・苦笑 手書きの味わいや温もりが伝わるコミュニケーション。素敵な提案なので、名城大学附属高等学校の文化になったらいいな!と応援しています。
5愛知県立瀬戸工科高等学校「Free from rule」
「学校にメイクしていきたい!」という皆さんの切実な思いから、”高校生がメイクする理由”に向き合って、皆さんは”ユニバーサルメイク”という解に辿り着きました。人によってメイクしたい理由は様々だけれど、「可愛く見えたい!」という共通の思いがメイクしたい理由の根底にある・・・とすれば、みんなの思う”可愛い”って!?人によって案外、いろいろだったりしないのかなと思いました。そのあたり、もっと時間があれば皆さんに直接お聞きしてみたかったです。私のお話でごめんなさいね、私は昔からお肌が健康的な小麦色(地黒!)で、色白の子がとーっても羨ましかったんです。色白の子に似合う色が似合わないので、自分の健康的な肌色に似合うメイクやファッションを探すしかありません。自分の特徴や個性だけでなく、”好み”によっても”可愛い“の基準は変化するのかなと思います。かつてヤマンバメイクを可愛いとかかっこいいと思う人もいれば、怖いと思う人もいました。そんな違いがあるから、メイクが高校生の自己表現になっていたのかと思います。もちろん、若い頃の自己表現が、振り返ると”黒歴史”になっちゃうことはあります。でも、黒歴史も大人になれば良い思い出、笑いのネタになります。”失敗”しながら自分のメイク、自分らしさを見つけていくプロセスは、人生を楽しくしてくれます。だから、どうか安心して、自分の思う”可愛い”を、自分らしさを、本当の意味でのユニバーサルメイクをたっぷり時間をかけて見つけてくださいね。中山学長のコメントにもありましたが、保護者の方の理解も背中を押してくれると思います♪頑張ってください!!
6「京都府立木津高等学校「Chaubt!」
とにかく皆さんのお茶への愛が素晴らしい提案でした!あれだけお茶を飲んだら、きっとお茶酔いもされたことでしょう!私自身、お茶は栽培も製法も難しい印象があったのですが、実際にカードを手にしてみると読みものとしても面白く、さらにゲームを通してお茶の分類など知識を体系化する助けになる・・・よくできているなあと感心してしまいます。これはひとえに、皆さんが時間をかけてお茶を理解し、お茶と仲良くなっていったプロセスがゲームに反映されているのかなと思います。全国各地にお茶の名産地やお茶をフィーチャーした観光地やお宿もありますものね。今後、コラボ展開も楽しみだなと思いました。お茶を愛する仲間たちとお茶探究の旅をつづけてくださいね!
7京都市立堀川高等学校「Jeweravel Search」
圧倒的な映像のクオリティ、そしてリピート観光客の分散にフォーカスした説得力のあるプレゼンと質疑応答が素晴らしかったです。トレジャーチェストの中身をさらに検討して、リピート観光客を効果的に惹きつける方法を吟味し、是非、実装化を目指してくださいね。皆さんが観光立国のオーバーツーリズムの救世主となってくださることを期待しています!
8.大阪府立淀商業高等学校「国シュミ!国会シュミレーション」
18歳になって「投票所入場券(ハガキ)」が家の郵便受けに届いたとき、「ああ、成人なんだ!」と実感が湧いたという声を耳にします。そんな年齢にさしかかる皆さんらしい提案をありがとうございました!「推しの政治家がおらん!」だったら、政治家体験しちゃおうという発想が斬新で面白かったです。実際に議員さんたちに話を聞いて、ゲームに反映していたのも良かったです。選挙に勝つためのパラメーターの選定方法や国政と地方政治とで扱う政策も変わってくるのでそのあたりの設定などもっとお聞きしたかったです。最近では議会で中高生が政策提言できる機会も見られるので、さらに政治のハードルを下げるためのきっかけづくりを引き続き探究してくだされば嬉しいです!
9香川県立高松東高等学校「バズる場★ミュージアム」
美術館の運営課題や文化庁施策(美術館や博物館を地域に開いた教育の場としていく方針)に添ったニーズにマッチした提案というだけでなく、伸びやかな子育て環境をつくるための素敵な提案だなと思いました。美術館のスペースが持つ強みや特徴を活かしたり、皆さんの保育の知識や体験も活用できると、きっとさらにわくわくする提案になるかと思います。地域ではは学生さんの提案をきっと歓迎してくださると思うので、地元の美術館で実現してくださればうれしいです!
10九州産業大学附属九州高等学校 「なりきりゲーム『メデタシ』」
審査会でかなり評価の高い提案でしたし、個人的にも高得点を入れさせていただきました。いじめを減らすために相手の気持ちを思いやる想像力が必要であるという発見をしたこと、誰もが知る昔話ですら悪者の側の気持ちに立って考える機会がなかったという発見をしたこと、その上で、SNSに触れる前の小学1年生〜3年生にターゲットを設定したことや昔話とターゲット年齢との親和性などかなり検討を重ねてこられたのがしっかり伝わりました。実際に子どもたちに遊んでもらい、専門家の助言などフィードバックを反映したことも素晴らしかったです。「道徳の授業の映像は生々しい」という感覚もとても大切な気づきをいただきました。是非、学校教育の現場で実装化していただきたいです!
東北芸術工科大学 プロダクトデザイン学科教授、高大連携推進部長
「総合的な探究の時間」が全国の高等学校で全面実施されて3年が経とうとしています。各校での探究活動が特色を持ち始めるとともに、より主体的な取り組みが増えていることを実感しています。そうした中、今年も600を超えるチームが、高校生ならではの視点を携えてデザセンに挑戦してくれました。
今年は、高校生に身近な社会課題を柔軟に捉えた提案、規模の大きな課題を自分ごと化して具体的な行動につなげようとした提案も多く見られました。特に決勝大会に進んだチームは、課題への着眼点の鋭さに加え、試行錯誤を重ねながらアイデアを深め、説得力のあるアウトプットへと昇華させていったことが伺えました。その過程で発揮された「課題の本質を見出す力」「協力し合いながら創造的にアイデアを広げる力」「周囲を巻き込み主体的に実行していく力」は、これからの皆さんの人生においても大きな財産となるはずです。
質疑応答の場面でも皆さんの対話力が光っていました。問いを受け、考えを深め、新たな視点を得る。そうしたライブ感の中で得られた体験価値もまた皆さんを成長させてくれたことと思います。
このようにして探究活動を通じて培った力は、進学や将来のキャリアにおいても皆さんの可能性を広げる大切な底力となります。これからも、好奇心を持ち続け、自ら問いを立て、仲間とともに考え抜く姿勢を大切にしながら、新たな挑戦を続けてください。
認定NPO法人底上げ 理事長 コミュニティデザイナー/東北芸術工科大学 コミュニティデザイン学科 准教授
デザセンは今年で30回目を迎えました。この記念すべき節目の年に審査員を務めさせていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。また、ここまでデザセンに関わってこられた全ての方々に、心から敬意を表します。
今年の発表も、例年と同様に熱量の高いものばかりでした。まず目を引いたのは、発表動画のクオリティの高さです。音やイラストを活用した演出、さらには(おそらく)教員を登場させた劇形式のプレゼンなど、非常に工夫が凝らされ、思わず見入ってしまうほどでした。
もう一つ印象に残ったのは、発表者のプロジェクトへの強い思いです。特に今回優勝した木津高等学校の「お茶」にかける情熱は際立っており、その思いの強さが結果につながったのではないかと感じました。
情報化社会となり、知識を得ることはこれまで以上に容易になりました。しかし、「知ること」と「理解すること」、そして「体感すること」は全くの別物です。ただ頭で理解するだけでは、人の心を動かすことはできません。今回の発表の中にも、実際に行動し、体験し、試行錯誤を重ねたからこそ生まれたアイデアが数多くありました。まさに、それこそがデザセンの醍醐味であり皆さんの強みです。
皆さんには、これからも知識を蓄えるだけでなく、自らの手と足を使い、体験を通して学び続けてほしいと思います。そうした積み重ねこそが、よりよい未来を創る力になるはずです。
東北芸術工科大学 文芸学科 准教授
インターネットやAIなど、絶え間なく歩みを続ける技術革新により、わたしたちはさまざまな物事を驚くほど素早く処理することが可能となりました。「便利になった」と言うこともできますが、すぐ結果に辿り着けてしまうようになったことで、「物事のプロセスが見えにくくなった」と言うこともできそうです。結果だけを求め、プロセスを軽視して、本当に大丈夫なのでしょうか。いや、きっと、煩雑に思えるプロセスにも、わたしたちに必要な学びがあるはず。
今回のデザセンで印象深かったのは、プロセスの部分をサボらず丁寧にやったチームが、結果としてよい成績を収めていたという事実です。テーマを決め、計画を立て、試しにやってみたことが上手く行かず足止めを食らい、また新たな道を見つける試行錯誤があったり、解決のヒントをくれそうな誰かに話を聞きに行ったり……。性急に答えを求めるのではなく、自分の足で一歩一歩進んでいくことの大変さ、しんどさの中にこそ、尊さがやどるのだなあ。そんなことを思いながら、みなさんのプレゼンを見ていました。
この尊さを手に入れるために、時間のやりくりと、ナイスなチームワークと、めげずにやり通す忍耐力が必要なのは言うまでもありません。さながらスポーツ競技のようです。思考する筋肉をムキムキにして、課題解決にあたるみなさんは立派なアスリート。その思考筋を今後の人生にもぜひ活かしてください。
東北芸術工科大学 美術科 総合美術コース 専任講師
デザセンにご応募いただいた全国の高校生の皆さん、そして予選を勝ち抜いてプレゼンをしてくれた10チームの皆さん、本当にありがとうございました。そして、生徒さんたちを支え、応援してくれた学校の先生方、保護者の皆様にも御礼申し上げます。
毎年の決勝戦、プロジェクトへ想いをダイレクトに伝える熱い時間になりますが、プレゼン動画のクオリティが年々高まっているのを感じています。今年はそうした点からも、多様な表現を駆使し、見る人にわかりやすく、楽しんでもらいたいという作り手としてのこだわりがつまっていて素晴らしいものばかりだと思いました。
「デザセン」にはたくさんの魅力がありますが、1つは「広がり」だと思っています。はじめは小さな疑問かもしれませんが、チームメンバー、クラスや学校全体へ、さらには学校をとびたして地域の大人の方達へと、様々な人を巻き込みながら人の輪が生まれてくるところに毎年ドラマを感じています。高校生の皆さんがハブとなり、これまでにないつながりを社会に生み出しているのです。
2つ目の魅力は、探求の核にある「知りたい」という新しいことへの興味関心です。仮説を立てて調査していくと、だんだんと知りたいことの輪郭が見えそうになる、けれどすぐに新しい疑問が生まれる、この繰り返しの中を、もがきながら進んでいけるのは先ほどの思いがあるからこそだと思っています。
デザセンでの皆さんのエネルギーはたくさんの方に響いています。ここでの経験は、取り組むことが変わってもずっといかせる財産だと思います。これからも新しい「知りたい」に向かって、一緒にトライ&エラーを楽しんでいきましょう。
今年の傾向としては「SDGs」「ジェンダー」「地域おこし」系のアイデアが多かったものの、「いじめ」や「SNSでの誹謗中傷」、「戦争」や「クリーンな政治」などに関するものもあり、世相を反映したものでした。
少し残念だったのは、問題点への指摘だけ、調べただけの提案が多かったことです。さらに、解決手段の多くが「アプリ」や「ゲーム」、「ポイント付与」だったことも挙げておきます。「アプリ」が「魔法」で、「ポイント」を集めれば「達成」だと感じてしまうのは、今のデジタル世代特有の感覚ですし、我々大人の社会を映したものなのかもしれません。
優勝した木津高校「Chaubt!」や、2位の堀川高校「JEWERAVEL SEARCH」も、ゲームやアプリでの解決策が示されていましたが、何度もみんなでお茶を飲んだり、京都の混乱した交通網への日々の体感から絞り出されたリアリティーを感じることができ、他者への共感へと強くつながりました。
探究型学習が全国に広がる前から「デザイン選手権」と銘打ち、高校生のデザイン的視点を披露しあってきた本大会ですが、今や早くも「探究型学習」が探究されないままにマニュアル化されていることを危惧しています。高校でご指導にあたる先生方のご苦労は想像できますが、できるだけ高校生を手放し、彼ら自身のリアリティーと体験に基づいた探究へと導いていただければと願っております。安易な「正解」を求めず、たとえ結果が想像とは異なる「別解」であったとしても、その結果を吟味することができれば、それこそが探究なのではないでしょうか。