2018入賞

『学生のための休み方改革』

優勝(文部科学大臣賞)・ニコニコ生放送視聴者賞

『学生のための休み方改革』

有田工業高等学校(佐賀県)
藤瀬裟也佳さん(3年)/中薗優芽花さん(3年)/渕上莉々華さん(3年) 石原恒平 教諭

『選択制服』

準優勝・高校生賞・大学生賞

『選択制服』

瀬戸窯業高等学校(愛知県)
佐藤愛香さん(3年)/松島風葉さん(3年)/横田実空さん(2年) 大泉健太郎 教諭

『カムバック和服』

第三位

『カムバック和服』

玉川学園高等部(東京都)
斎須りずさん(1年)/浅見仁一さん(1年)/佐藤安純さん(1年) 栗田絵莉子 教諭

『ヒッチイキ・ハイク』

チームワーク賞

『ヒッチイキ・ハイク』

西脇高等学校(兵庫県)
久保 杏さん(3年)/村上真子さん(3年)/高橋鈴華さん(3年) 宮田麻美 教諭

『昆Chu♡』

入賞

『昆Chu♡』

青森工業高等学校(青森県)
福士天音さん(3年)/高井竜史さん(3年)/吉田 陽さん(3年) 奥谷 等 教諭

『渡り縁側』

入賞

『渡り縁側』

科学技術高等学校(静岡県)
鈴木 瞬さん(2年)/佐藤惟吹さん(2年)/天野紫耀さん(2年) 杉山 諭 教諭

『I♡Uシェアハウス』

入賞

『I♡Uシェアハウス』

高松東高等学校(香川県)
三浦彩夏さん(1年)/谷川美羽さん(1年) 田村千明 教諭

審査講評

中山ダイスケ

中山ダイスケ(なかやま・だいすけ)

アーティスト、アートディレクター/東北芸術工科大学教授 ◎審査員長

中山ダイスケ

小さな気づきが世界の未来を明るく照らす

今回のデザセン2018決勝大会の結果は、1~3位までが高校生活をテーマにした提案で、有田工業高等学校『学生のための休み方改革』、瀬戸窯業高等学校『選択制服』、玉川学園高等部『カムバック和服』という顔ぶれでした。デザセン決勝の上位を学校生活のテーマばかりが占めるというのは珍しいことですが、身近な問題を変えたいという強い思いにリアリティが感じられ、他の7チームよりも切実さが伝わり輝いて見えました。

Facebookを開発したマーク・ザッカーバーグも、学校の中で友人とどう知り合うかという願望を元に仕組みを生み出し、それが今世界を席巻しています。もっと前のことを言うと、フォードという自動車も、馬よりどうやって速くに遠くに行くかという自分視点から生まれました。アップルコンピューターなどもそうですね。私自身も自分が食べたいモノを作ったらヒットしたということが多いです。このように身近な生活の中に課題を見つけることは新しい発明の基本です。世界を変えるアイデアのほとんどは身近な気づきからはじまっています。
これから高校を卒業し会社で働く人、大学や専門学校などで学ぶ人、留学や起業など、みなさんが次のステップに進むとき、今日発表したことや感じたことをぜひ思い出してください。大きく世界をかえようと思ったらまずは近くから、例えば世界中の人と仲良くしたいと思ったら、まずは家族や友人との接し方から考えてみましょう。そんな小さな等身大の気づきが、きっと未来を明るく照らしてくれるきっかけなのです。

一次審査に集まった提案のほとんどが、私たち大人や社会がとっくの昔に解決しておくべき事案ばかりだったことに恥ずかしさを覚えました。なぜ現実社会では何十年も同じような問題が解決できないのでしょう。交通手段のない高齢者は街の中で自由にヒッチハイクすればいいとか、家中の家電が自ら充電機能を持っていればとっさの災害時に困らないとか、子供なら誰もが当たり前に考える事柄を、改めて高校生の目線で発表してくれたことは、社会にとって大変重要なことです。社会全体が考え方を更新し技術さえ追い付けば、どれもみなさんが大人になった頃には実現しているかもしれません。毎日同じような悲しいニュースが流れ、まだまだ苦しむ人々に溢れる世界を見ながら、私たち大人が気づかないあたりまえのことを、あらためて教えてくれたことに感謝したいです。

「いろいろ奪うと、大人ができる」という有名なコピーがあります。瀬戸窯業高等学校『選択制服』の発表にあった、「小学校までは、男子も女子も関係なかった」という文言からもわかるように、私たちは大人になりながら、さまざまな常識や概念にしばられ、みんな一緒に頭を固くしていきます。デザセンに参加してくれた高校生のみなさんには、何かを奪われながら大人になるのではなく、大切な課題意識を抱えたまま柔らかな大人になって、素敵な世界を実現してほしいと願っています。また挑戦できる学年の人は、ぜひ来年のデザセンに参加してください。僕たち大人もみなさんに負けないよう、大学生のみんなと力を合わせてデザセンをもっと素敵な、柔らかな大会に更新していきます。

奥平博一

奥平博一(おくひら・ひろかず)

学校法人角川ドワンゴ学園 常務理事/N高等学校 学校長

奥平博一

「高校生」という足かせを外して、自分の好きな道で輝こう

「高校生デザイン選手権」、このような新しいタイプの“学び”は、社会との間の架け橋をつくり、互いに深くかかわり合うことによって多様な考えを生む可能性を秘めています。そして、その中で社会課題を解決し、新しい価値が想像されれば社会に対しても正のインパクトが期待できます。これらは教科書学習のように知識の享受を主としているプログラムではなく、ある意味ゴールが存在しません。だからこそ、歩みを止めることなく興味のある分野を徹底的究めることができその過程であらゆるスキルを身につけていく深い“学び”が達成されるのです。
教養や知識が得られるのは、何も教科書に限ったことではありません。自分の考え、目的をもって行動することによって得る経験は、社会に出た後で必ず役立ちます。そして何より、自らの興味が源泉となっている“学び”こそが、創造力を育むための重要な要素です。
主体的で深い学びは、考える力をより高い次元まで引き上げる可能性を持ち、そこには限界はありません。N高校でも2018年2月に「企業部」を発足させ、高校生のうちに起業に取り組むという新たな挑戦も行っています。
情報技術の発達で、欲しい情報は誰でも手に入るようになり、年齢や世代によって得られる情報の質そのものにほとんど差が無くなってきています。これまで当たり前のように存在していた「高校生だから」という足かせは現在においてはありません。
誰もが自分の好きな道で輝ける。そんな未来は近くまで来ているのです。

柿原優紀

柿原優紀(かきはら・ゆうき)

編集者・ローカルイベントディレクター/tarakusa株式会社 代表取締役

柿原優紀

未来に向かうために“HOW”を問い続ける

ファイナルステージに登場したのは、試行錯誤を重ねた尽くしたことが感じられるプレゼンテーションばかりでした。ファイナリストのみなさんに共通していたのは、「HOWの道筋を想像した提案」です。
ファイナルに至るまでの審査でも、たくさんのプレゼンテーションボードを拝見しました。残念ながら審査通過とならなかった提案たち。その多くに感じたのは、このHOWの道筋を想像するという点の不足です。
目の前にある社会課題と、「こうであったらいいな」と描く未来。その間にあるはずの「HOWの道筋」が、「“アプリ”で解決」といった大雑把なイメージだけで終わっているのです。
(結果的にそのデザインがアプリというツールであってももちろん良いという前提のうえで)、まず、自らが発見した社会課題の原因を紐解いてみましたか? 解決に向かうイメージを描くことはできましたか? この課題解決のためのデザインは今までにされてこなかったのでしょうか? 世界じゅうの類似事例も探してみましたか? すでにあるとしたらなぜこの課題が今も残っているのでしょうか? Jより大きなインパクトを持つための形は? これからの時代や環境を想像すると必要となる進化は? では、どうすれば?
この「HOW?」の問いと、とことん向き合うこと。未来に向かうデザインは、そこから生まれるのだと思います。

竹内昌義

竹内昌義(たけうち・まさよし)

建築家/東北芸術工科大学教授

竹内昌義

どうしたら、新しい気づきを得ることができるのか

デザインを考えるとき、新しいことを考えつくことができるかできないかが全ての始まりになります。でも、どうしたらそういうことができるようになるのか。答えはひとつ。今ある様々な状態、当たり前だと思っていることを疑うことが必要になってきます。現在の状況に満足して、「ま、世の中こんなもんさ」と思っていたら、何も気がつくことはできません。様々なことを疑うこと。これが全ての始まりです。親の言うこと。学校の言うこと。いわゆる世間がいうこと。全て疑って考えよう。特に注意しなければいけないのはマスコミやテレビのいうことです。マスコミやテレビでさえ真実を語っていないことは確実にあります。疑うことは、ちゃんと考えることにつながります。考えること面倒くさいなどと言ってはいけない。自分で状況を考えて、物事を決めていく。それが大人になる、あるいは自立するということです。そうなったら、いろいろ社会の矛盾が見えてくるでしょう。別に失望しなくてもいい。それを見つけたら、解決策も見つけやすい。その解決策がデザインです。
自由に物事を考え、決める勇気と能力を持つことは、最初は難しくても、そのうちできるようになります。そして、そうやって得た力は生きていくために必要なものです。何も考えていないと、知らないうちに、誰かに利用されたり、いいように使われたりするようになり、自由であることができなくなります。

矢部寛明

矢部寛明(やべ・ひろあき)

認定NPO法人底上げ 理事長/東北芸術工科大学講師

矢部寛明

高校生が社会をつくるエンジンになる

過去に多くの高校生の活動やアイディアを見てきましたが、これほどまでに舞台の整った大会は初めてでした。その舞台を作っているのは本学の職員のみならず、大学生であり、そのスタッフ側から滲み出る熱量やデザセン愛がこの大会を支えているのでは無いかと感じました。
応募総数は910。その中で選ばれた10チームのプレゼンはどれも特徴的で大人の想像を軽く超えてしまうものばかり。10チームの発表に関しても、時に緊張していながらも堂々としていたように思います。また、それらのチームを支えてくださった担当教員の方々の発表を見守る姿は、まさにこれからの教育に必要な要素だと感じました。本学の学生においても、限られた時間の中で高校生と信頼関係を築き、サポートしていたように思います。
僕には好きな言葉があります。「誰かの夢を応援すると、自分の夢も加速する」という言葉です。高校生の舞台をみんなでつくる。そして支える。応援する。この言葉はまさにデザセンを象徴しているように感じます。
デザセンを経験した高校生がやがて、社会をつくるエンジンとなる。そんなことを想像させてくれる今回の大会でした。また、25周年という、四半世紀に渡るこの活動はとても意義あることであり今日まで実施されてきた全ての関係者に敬意を評したいと思います。
さて、僕も高校生に負けないように精進しよう。