GOLD|優勝(文部科学大臣賞)・市民賞
『リアル人生ゲーム』
国分寺高等学校(東京都)
森田悠生(1年)/田中陽菜(1年)/三橋星蘭(1年) 儀部佳織 教諭
GOLD|優勝(文部科学大臣賞)・市民賞
国分寺高等学校(東京都)
森田悠生(1年)/田中陽菜(1年)/三橋星蘭(1年) 儀部佳織 教諭
SILVER|準優勝・ニコニコ生放送視聴者賞
岐阜総合学園高等学校(岐阜県)
岩田悠子(3年)/高木優衣(2年)/大平育歩(2年) 石井正人 教諭
BRONZE|第三位
仙台二華高等学校(宮城県)
髙橋舞(1年)/吉川綾乃(1年)/渡部早紀(1年) 鈴木雅之 教諭
PRIZE|特別賞
和歌山工業高等学校(和歌山県)
福本堅人(2年)/橋本大河(2年)/山崎理奈(2年) 児玉幸宗 教諭
PRIZE|入賞・大学生賞・高校生賞
米沢工業高等学校(山形県)
小島友里(2年)/小林陸矢(2年)/鴫原のぞみ(2年) 大木佐知子 教諭
PRIZE|入賞
会津学鳳高等学校(福島県)
吉川茉央(3年)/小柴優(3年)/渡部あすか(3年) 丸山弘樹 教諭
PRIZE|入賞
伊東高等学校城ヶ崎分校(静岡県)
佐藤恭子(3年)/松浦茉莉子(3年)/木部美菜恵(3年) 大津忍 教諭
PRIZE|入賞
萩商工高等学校(山口県)
松浦麗奈(3年)/鈴木勇輝(3年)/赤木舞(3年) 松嶋渉 教諭
PRIZE|入賞
松山工業高等学校(愛媛県)
近藤桃(3年)/髙橋澪央(3年)/斯波雪乃(3年) 末光哲郎 教諭
PRIZE|入賞
有田工業高等学校(佐賀県)
江頭沙希(3年)/諸隈希望(3年)/地原晶(3年) 下大田真理子 教諭
放送作家、脚本家/東北芸術工科大学教授 ◎審査員長
(株)ユニバーサルデザイン総合研究所 代表取締役所長
パワースピーカーではなくパワーリスナーであること
本年度の優勝に輝いたのは、国分寺高等学校の「リアル人生ゲーム」である。聞く機会のないお年寄りの話を、生活、社会などのカテゴリーに分けてヒヤリング、それをコマにして世代間交流を楽しむ、すごろくゲームの提案である。このゲームは、対お年寄りだけでなく、ニートの若者や若い男女にとっても、コミュニケーションツールとして機能するだろう。人としての重要な資質が、「パワースピーカーではなく、パワーリスナーであること」を改めて教えてくれた、素晴らしいデザイン提案である。
準優勝は、岐阜総合学園高等学校の「魚の骨選手権」。魚の綺麗な食べ方を教え、上手な子どもを表彰するというコンテストの提案である。微笑ましく、身の丈にあった提案であると同時に、幼稚園から大学まで、あらゆる学校に今すぐ導入可能なユニバーサル性も評価できる。
個人的に感動したのは、仙台二華高等学校の「古語に歌はむ」だ。「不思議なポッケ」が「あやしき懐」に、「とっても大好き」が「いと恋しき妹」に詠み替えられた古語バージョンの「ドラえもんのうた」には感動した。EXILEあたりが歌い出したら、楽曲のニューバージョンとしても流行りそう!!今回も小山審査委員長、プロデュースしてあげてください。
認定特定非営利活動法人カタリバ代表理事
半径5メートル内の変化に反応しそこにある課題と対峙すること
社会は今、ものすごいスピードで変わり続けています。
日本では少子化が大きな問題となっていますが、世界の人口は増え続けています。日本では多くの人が核家族で暮らし、食事もバラバラにとったりしていますが、たとえば私の愛するブータンでは親戚みんなで食卓を囲み、手で食事をしています。
解決の糸口が見えない紛争に喘ぐ国々では、みなさんと同じ年齢の子どもたちが、今日も学習の機会に恵まれずに生活をしています。想像できますか。
ノーボーダー:No Border。世界中の人がインターネットでつながり、働く場所を求めて移住することが当たり前となった時代。言葉や文化、歴史や宗教を越えて、自分一人では持ちきれない力を持った仲間と出会い、協働していく力を得ることは、生き抜くための最大の武器となります。複雑化していく課題には、集団の知を結集し、皆で立ち向かわなければ解決を導き出すことはできません。課題解決のためのチームをつくるとき、一人ひとりに求められるのが、集団に提供できる“あなた個人の力”です。
グローバルな視点が必要な時代だからこそ、いま目の前で起きている半径5メートルの変化に敏感に反応し、そこにある課題から目をそらさず、きちんと対峙することは、少し先のあなたの未来に対するなによりもの成長機会となります。
今回のチームメンバーと議論し、意見が割れながらも、ひとつの「デザイン」を仕上げていったそのプロセスこそが、価値です。
さあ、次はアクションです。あなたのアクションをデザインしましょう。その先には、また次のステップを上がったあなたに出会えるはずです。
作家、脚本家、映画監督、演出家
世の中を良くしたいと思い行動するあたなが素晴らしいデザイン
いじめられっこだった私にとって、チクリをひとつのデザインとして提案していたチームには、へえ、と思いました。現に、最近、水産系の大学で、長い海洋実習の船の中で、いじめがあり内部のチクリによって明るみに出て、暴力を受けていた学生が救出されたというニュースがありました。
デザインってものの見方を変えたり、みんなが受け取りやすいように分かりやすい様にしたり、使いやすい様にしたり、そういう効果もあるんですよね。それをね、改めて教えてもらうようなデザセンでした。
でも終わってみて、そして時間がたってみて、いろいろ心に残っているのはあのチームのあれ、どうしたらもっとよくなるのかなぁ、なんか惜しいなぁ、というものだったりします。
そういうのをずっと考え続けるのもいいですよね。
何年もかけて考え続けることが、実は未来につながっていくのかもしれないです。考えるきっかけ、が、デザセンなのかなって。
デザインって、グラフィックにしてもそうだけれどなかなかできるものじゃないですよね。
ああでもない、こうでもない。1度壊してみたり、疑ってみたり、人に見てもらったり。
他の勉強もあるから、なかなか時間がとれないとおもうけれどこういうことに参加したということを、糧に、そこから、どれだけ飛躍していくか、が意外と大事なんじゃないかなと思います。
私は広告代理店時代に、没になったアイデアをどこがだめだったのか、じっくり考えたり、洗い直したり。負けたプレゼンの理由を考えたり。そういうこと、下積みが、今、役に立っているように感じます。短距離じゃなくて長距離、走れるような基礎体力がついたような。
世の中をよくするデザインなんて、そう簡単に生まれるものじゃないし。でも、世の中をよくしたいな。と思うこと。よくしようと行動したあなたこそが、たったひとつの、素晴らしいデザインです。
建築家/東北芸術工科大学教授
思考と実践を行き来することに面白さや楽しさもプラスすること
今回も素敵な案の数々、ありがとうございました。
岐阜総合学園高等学校「魚の骨選手権」や仙台二華高等学校の「古語に歌はむ」など、高校生らしいアイデアは本当に魅力的です。それらが素晴らしいのは、ただおもしろいだけではなく、実は裏に大事なことが隠されているからだと思います。例えば、「魚の骨」でいえば、日本の食生活、それを取り巻く文化、食事を通したコミュニケーションのこと、健康、暮らし方など。一言で言うと「食文化の継承」など難しく抽象的な言い方ができます。でも、そう言ってしまうと、なかなか取り掛かりにくく、大切だとわかっていても取り組みにくくなってしまうのではないでしょうか。そうなってしまっては元も子もありません。だから、抽象的な概念と具体的な取り組みを行ったり来たりしなくてはなりません。
高校生の勉強はどちらかというと、抽象的な概念を取り扱うことが多いように思います。でも、実際の仕事や社会は、この「行ったり来たり」が求められます。そうやって、思考と実践があって、社会は回って行きます。
あと、大事なのは「おもしろいこと」「楽しいこと」です。苦虫を噛み潰すような顔をしていたら、誰もそれをやりたいとは思いません。だから、おもしろさ、楽しさが必要なんです。そういうことを考えていくとみんなが楽しくなってきます。デザインってそういうものです。皆さんも、「行ったり来たり」を楽しんでやってみてください。
クリエイティブエージェンシー「サステナ」代表
自分の頭で考え尽くして真っ直ぐ勝負する高校生たちに期待
世の中うまくいってますかー。毎年、デザセン決勝大会の決戦の場となっている山形の山では木霊が叫びます。今年もまた、大人たちに見えないものを見、手が届かない所へ手を伸ばす個性的な高校生がたくさん集まりました。優勝した『リアル人生ゲーム』は、子どもとお年寄りが介護や福祉を自由に対等に面白がれる機会を設計しました。義務感やきれいごとと一線を画して子どももお年寄りも自由に対等に楽しめ、かつ、お年寄りの人生の知恵や尊厳が子々孫々に伝え続けられる仕組みはお見事。心ばえも素晴らしいけど、彼女たちの「ボランティアはつまらない!」という素朴な動機が、ゲームというコミュニケーションツールに無理なく上手にデザインされていました。『魚の骨選手権』も奥の深い企画です。なぜなら食の場面で魚の生態系を意識することは、環境意識や生物多様性の保全につながるから。『古語に歌はむ』と『チクルのイメージ』は両方とも言語への意識を高める企画です。こう考えると今年は教育関係のアイディアが多かったのですね。現代社会は来年も切羽詰まっていきそうです。もはや純粋無垢な高校生らしさより、手強くて生意気で斜に構えつつも自分の頭で考えて、真っ直ぐ勝負する高校生に期待するしかない。大人たちは拍手と支援を。高校生はとにかく、考えて、考えて、考えて、考え尽くしてください。
コミュニティデザイナー/東北芸術工科大学教授
人はつながって生きる本質を掴んだ秀逸なアイデア
今回はじめてデザセンの審査員を務めさせていただきました。10校ともに力作揃いで、大変楽しい審査の時間でした。高校生のアイデアもそれぞれのユニークな視点から生み出されていましたが、審査員の視点もそれぞれで、評価の視点が少しずつ違う面白さがありました。
そんな中、私が一番感心したのは、最優秀賞の国分寺高等学校の「リアル人生ゲーム」です。私自身、人と人のつながりから地域を元気にするコミュニティデザイナーの仕事をしていますが、人がどのように「老いの時」を過ごすかは、重要な課題のひとつです。特に介護の現場では、今まで暮らしていた地域でのコミュニティから切り離されて、孤独な状態になりがちです。医学博士の石川善樹さんが書かれた『友達の数で寿命が決まる人との「つながり」が最高の健康法』(マガジンハウス)という本にも書かれているように、やっぱり人は人とつながっていたい、つながりと生きることは密接な関係にあるんだと思います。
こうした観点からも、「リアル人生ゲーム」のアイデアは秀逸です。お年寄りとのつながりを生み出すためには、まずはお年寄りから多くの情報を引き出すことが大切です。それをゲームという方法で成し遂げ、短時間で一気に関係を深められる工夫がたくさん見られました。これは私たちコミュニティデザイナーが、地域に入る時にさせていただく事と非常に似ています。
「ゴミひろいボランティアはつまらない」という動機からスタートしているのは高校生らしいなと思いましたが、いやいや、これだけ本質を見事に掴める若者が登場してきているとなると、私たちももっと頑張らなくてはと元気づけられました。ありがとうございました!
日常への眼差しを研ぎ澄まし「気づくこと」が日常を豊かに
22回目を数える今年のデザセンは、過去最多の応募数となりました。まずこの大会に大きな熱量をもって挑戦した全ての高校生の皆さんに、感謝の気持ちを伝えたいです。デザセンのために大切な時間を費やしてくれて、本当にありがとう!ひとつひとつの作品に何人もの審査員そして大学生スタッフが丁寧に目を通し、10チームが決勝戦に進出してきました。そこで披露された提案はどれも素晴らしいものでしたが、特に僕が好きだったのが岐阜総合学園高等学校の「魚の骨選手権」です。大人では絶対に閃かない、高校生の眼鏡で見つけた日常の問題点。これまでに寄せられたおよそ1万点の提案の中で、「魚の骨」をテーマにした作品なんてありませんでした。誰も思いつかないことを発想する……まず、これだけで大きな価値だと思います。
発想のヒントは日常に転がっています。無我夢中で探すこと以上に、気づくことが大切なのです。日常への好奇心と、視点の転換によって「気づき」は得られます。デザセンに挑戦することは、周囲を見つめる自分の眼差しを研ぎ澄ますことであり、ひいてはそれが日常を豊かにすることにもつながります。
そういう意味も込めて、今回デザセンに挑戦した全ての皆さんに、僕は「坐辺師友」(ざへんしゆう)という言葉を贈ります。