2016入賞

『センカツ』

優勝(文部科学大臣賞)・大学生賞

『センカツ』

高松工芸高等学校(香川県)
溝口亜梨沙(3年)/川村聖(3年)/橋本璃沙(3年) 西澤智子 教諭

『味来缶』

準優勝

『味来缶』

神戸市立科学技術高等学校(兵庫県)
森田知子(3年)/守本翼冴(3年)/代理出演:阪田悠樹(3年) 中野里奈 教諭

『哲学バトル―言葉の続き』

第三位

『哲学バトル―言葉の続き』

伊東高等学校城ケ崎分校(静岡県)
小野あいり(3年)/矢田部茉唯(3年)/鈴木結加里(3年) 大津忍 教諭

『失敗 Sharing』

市民賞・高校生賞

『失敗 Sharing』

国分寺高等学校(東京都)
川上夏穂(1年)/北島奈苗(1年)/内藤舞衣(1年) 儀部佳織 教諭

『STOP PANDEMIC』

ニコニコ生放送視聴者賞

『STOP PANDEMIC』

桂高等学校(京都府)
生嶋桃果(3年)/土田歩(3年)/延時歩(2年) 松田俊彦 教諭

『ゴミの分別ゲーム』

入賞

『ゴミの分別ゲーム』

鶴岡工業高等学校(山形県)
奥山紗奈(1年)/輿石麻衣(1年)/菅原洸多さん(1年) 佐藤紀子 教諭

『田舎図鑑』

入賞

『田舎図鑑』

市川工業高等学校(千葉県)
中川珠美(3年)/山口怜奈(3年)/江口桜子(3年) 金子裕行 教諭

『Water Watch』

入賞

『Water Watch』

富士北稜高等学校(山梨県)
大石滉輝(3年)/梶原花鈴(3年)/宮野幸恵(3年) 菅沼雄介 教諭

『第二次金ゴマ革命』

入賞

『第二次金ゴマ革命』

西脇高等学校(兵庫県)
片岡美月(3年)/宮崎彩矢音(3年)/代理出演:北条彩織(3年) 常深まゆみ 教諭

『ジェネクロ Generation Closet』

入賞

『ジェネクロ Generation Closet』

九州産業大学付属九州高等学校(福岡県)
川田彩加(3年)/清家ひなた(3年)/星野かすみ(3年) 占部政則 教諭

審査講評

中山ダイスケ

中山ダイスケ(なかやま・だいすけ)

アーティスト、アートディレクター/東北芸術工科大学教授 ◎審査員長

中山ダイスケ

学んだこと全てがデザインの源

みなさん、全国から素敵な提案を持ち寄ってくださってありがとうございました。この大会は「ショー(発表会)」という観点から、どうしても賞や優劣をつけていますが、今回の10チームのプレゼンテーションは、本当に聞けてよかったと思う優秀なレベルのアイデアばかりでした。今年決勝大会に出場してくれた10チームの提案内容を分類すると、鶴岡工業高校『ゴミの分別』、桂高校『STOP PANDEMIC』、高松工芸高校『センカツ』、九州産業大学付属高校『ジェネクロ』は、説明が難しいことをうまく遊びに「置き換える」ものでした。また、市川工業高校『田舎図鑑』、西脇高校『第二次金ゴマ革命』は、自分の地元の情報をたくさん集めて「編集する」というもの。そして富士北陵高校『Water Wacth』、伊東城ヶ崎高校『哲学バトル』は、時間や感覚などの形にしづらいことを、プロダクトという「見える形」や、ワークショップという「体験型」にしています。さらに、神戸市立科学技術高校『味来缶』、国分寺高等学校『失敗sharing』は、人の想いや悩みを、気持ちの「共有」として纏めてくれました。

驚くことに、これら「置き換え」「編集」「見える形」「体験」「共有」という手法は、私たちプロのデザイナーやクリエイターたちが現場でいつも大切にしている手法そのものです。「わかりにくいことをわかりやすく伝えられるか」「心のよりどころをどのようにデザインしていくか」という難問への答えが、みなさんの発表に見事に表現されていました。中学校や高校では、どうしても勉強か運動の二つの成績数値が価値だと思われていますが、例えば「感覚の運動神経」や「想像力&妄想力の偏差値」があるとすれば、ここにいるみなさんの数値はとても高いはずです。応募してくださったみなさんは既に体感されたはずですが、デザセンまでに準備したコンセプト作りやプレゼンテーション作りの中に、国語的な大切さ、数学的な緻密さ、社会のような視野の広さ、理科のように論理立てていくこと、そして体育などで得られた身体感覚など、これまでに学んできたすべての要素が必要だったことと思います。極端な話、私は小学校などの国語、算数、理科、社会に次ぐ5教科目に、もしも「デザイン」という科目があったなら、このデザセンのように、いろいろな個性を持ち寄って学べるはずだと思っています。

これからみなさんが大学に進学したり就職したりしながら広い世の中に出ていく時、このデザセンへの挑戦で学んだデザインという思考は、みなさんの自信になるはずです。みなさんの未来がよりアイデアに富んだ世界であることを祈りつつ、願わくば、我々大人の老後の世界が、みなさんの力によって楽しく幸せであればいいなあと思っています。

竹内昌義

竹内昌義(たけうち・まさよし)

建築家/東北芸術工科大学教授

竹内昌義

社会をよく変えるというまなざしをもとう。

現在の社会は思ったより安定していません。人間がたくさんの化石燃料を使うことで気候は変動するし、世界は自由貿易から保護主義に、一方、科学技術はどんどん進み、ぼっとしていると取り残されそうです。日本では少子高齢化で人口が物凄い勢いで減り始めます。その変化は結構激しいんです。こういう時代に皆さんは社会に旅立っていくのです。ここでは前提条件が変わってしまっているために、今までの方法はあまり役にたちません。全く新しい方法が必要です。そして、それは自分のアタマで考える必要があるのです。
デザセンでのアイデアを考えることは、こういう問題に対処するための練習だと言えます。まず、課題を発見するために、「なんかおかしいのではないか」という違和感を大事にしましょう。前提条件が崩れているかもしれません。そこで、あるものを何かに変える必要があるかもしれません。些細なものでかまいません。意外と発展するかもしれないのです。様々な可能性を探るのに、友だち同士議論をすることが良いと思います。コツはお互いの意見を潰すのではなく、共通点を探しましょう。そうすれば、いろんな意見が乗っかって面白くなるはず。楽しそうな話で生まれた案は楽しいのです。楽しさは伝染力が強いのです。

マエキタミヤコ

マエキタミヤコ(まえきた・みやこ)

クリエイティブエージェンシー「サステナ」代表

マエキタミヤコ

たくさんの人の記憶に残る激戦

ついにここまで来たかと感慨深い『センカツ』。政治への変な緊張感から自由な高校生が、正面から政治をデザイン設計し、選挙カードゲームにし、分厚く検証したら、、みんなも楽しそう!。うーむ、センカツが投票率を上げる日も近いのか?!負けるな、大人っ!。他にも、遠くの人に家庭料理を届けられる缶詰『味来缶』。味の記憶に取り組み、文化の伝承に一役買う温かな視点が新鮮。SNSの世界は自慢ばかりが溢れているので「失敗のシェアこそ人の役に立つ」と逆転の発想かつ説得力のあるテーマに着眼した『失敗Sharing』。絶滅寸前、0.1%の国産ゴマで地域おこしを試みる『第二次金ゴマ革命』、全国の里山の暮らしや遊びを子ども向け図鑑にしてイナカへの興味を喚起し行きたくさせる『田舎図鑑』(検証つき)、哲学をバトル競技にし本質を探る言葉をもっと紡ごうという『哲学バトル』、祖母・母・娘の3世代のファッションを軸とする歴史と文化の振り返り『ジェネクロ』、「時間はお金で買えるというけれど本当に買えるのか」数値ではなく水紋で時間感覚を伝える『ウォーターウォッチ』、ゴミの分別を障害物競走のようなゲームにして楽しめる競技にしようという『ゴミの分別ゲーム』、感染症が流行るしくみと防ぐ方法を啓発する遊び教育カードゲーム『ストップ・パンデミック』。今年は着眼点も内容もプレゼントークもよく練られ、激戦。たくさんの人の記憶に「世の中をデザインする」スマートさをあざやかに焼き付けました。盛大な拍手でその勇気と栄誉を称えたいと思います。ぱちぱち。

今村久美

今村久美(いまむら・くみ)

認定特定非営利活動法人カタリバ代表理事

今村久美

「気づき」を元に「探求」を繰り返すことがデザイン

『デザセンがゴールではなく、これがスタートだと思っています。こうして形を作るということは大事なんですけど、時代の変化を捉えて、その度にまた考えるということの方が大切だと思うんです』。優勝チーム 高松工芸高等学校(香川県)『センカツ』チームの川村聖さんは、優勝者に手渡される王冠を持ちながら、たしかこんなことをおっしゃっていました。
『探究する』という言葉があります。ググってみると、「ある物事の真の姿・あり方をさぐって見きわめること。」とあります。これから次の進路を選択し、大人になっていく上で、しなければいけないことや、果たさなければいけない責任は増えていきます。でも、誰かに何かをさせられるやらされ感たっぷりな人生よりも、自分でやりたいとおもって楽しく探究者でありつづける方が、楽しいですよね。
『デザイン』は、誰かにオーダーされるか、もしくは自分でものごとに気づくことからはじまります。このデザセンは後者です。どのチームもとっても大切な様々なことに「気づいて」いました。しかし気づくだけではデザインは生まれません。気づきを形にするために、思考して実行して修正を繰り返しながら、まさに探究しながら、その都度アウトプットしていくことで、ものごとがデザインされていくのだと思います。
どのチームも、実際に実行をして、修正をしていました。このチャレンジは、みなさんが探究者になるための重要なチャレンジの機会になったのではないかと感じます。
本論ではありませんが、指導者である担当の若い女性の先生が、ご自身もデザセン出場者であるということに夢を感じました。きっと彼女も、デザセンを経験し、探究者として生きていく中で、高校生を育てる立場になっておられるように見え、長い歴史あるデザセンのもたらす価値の広がりを感じました。

志村直愛

志村直愛(しむら・なおよし)

東北芸術工科大学教授

志村直愛

デザセンで共鳴するワク2×ドキ2の正体!

ウワサには聞いていたデザセンの審査員、今回初めてその仲間に入れてもらったのだ!そう、私にとっても初めてのドキドキな経験!
たくさんの想いが詰まったプレゼンボード、あふれるアイディアが伝えるワクワク感!どうやってみんなを笑顔にするか、どうすればみんなのために貢献できるか?そんなワクワクな想像を日々積み上げてきたみなさんの作品は、どれもドキドキに溢れていました。そう…ドキドキ、ワクワクは自分で創り出せるエネルギーだったんだ!
デザインやまちづくりの現場では、大人はついつい自由な発想を常識や経験で裏打ちしてしまうのだけど、高校生のみんなはストレートにぶつかってくる!ちょっと荒削りだけど、その素直さ、純粋さがいい!ちょっと失敗しても、間違っちゃっても大丈夫!それが先々のための大いなる栄養になっていくはず
日々の様々なシーンでも思う存分突進してくださいね!
今回賞を逃した皆さんも決して落ち込むことはありません。本当によくやったね!という、みんなで共有できた達成感がそこにあるとすれば、それこそが最高の栄誉賞!私から授与いたしましょう!
ふと気がつくと、ライブ感溢れる審査会場で、みんなのドキドキとワクワクが審査員にもすっかり伝染していることに気づきました。手厳しい判定を下すように見える審査会場は、実は純粋な気持ちに還るステキな空間だったのでした。たくさんのドキドキをありがとう!また来年、ここ山形の地でみんなのことをワクワクしながら待っています!

野村友里

野村友里(のむら・ゆり)

フードディレクター

野村友里

もっと楽しい日常と世の中を作るきっかけが
生まれることを願って

初めて参加させて頂いたデザセン。
最初は高校生のあまりの初々しさが眩しすぎて
未来ってこうでなくちゃいけないなと内容よりもその参加されているみなさんの
ドキドキ感と純粋なワクワク感にノックアウトされてしまいました。
最初の出だしが“味来缶”とあって
食に関わる身の私としては、興味深い題材でグッと引き寄せられました。
世の中の情勢を踏まえたもの
身近な日常生活の中から生まれたこと
家族生活の中から、学校生活の中から、コミュニケーション中から
こうしたらもっといいのではと思う事柄は様々な尺度から生まれてきます。
特に“失敗sharing”はいいことだけをshareする
まるで自慢の掛け合いのようになっているSNSの中で
人には言えない失敗談を投げかけることで
逆により共感し合ったり励まし合ったりして
人との距離が縮まり、気持ちが軽くなるのではという発想は
私たちの心理をとらえた、実に楽しくすぐにでも実現してもらいたいというものでした。
歳を重ねていくと
いつのまにか経験をたくさん踏んでいて、
頭や目線がどうもかたくなりがちで
知っていると思いがちになってしまっている自分自身も。
色眼鏡なしに楽しい!面白い!あったらいいな!と思える題材も多く
これからの社会を動かす原動力の原石のような高校生から
たくさんのことの学ばせてもらった時間でした。
キラキラしたideaや視点が経験者と手を繋いで
もっと楽しい日常と世の中を作っていけるきっかけが
このデザセンからどんどん生まれることを願って。
ヒントは日常の中にたくさん潜んでいる!
本当に、ありがとうございました。